物語の舞台は立派なクルミの木が迎えてくれる大きな森、その名も「クルミ森」。
夏休み、コータとお姉ちゃんのユカはおじいちゃんに連れてきてもらったのです。
ふとした瞬間に「クルミおばばの森」へと迷い込み、そこで不思議な女の子くるみっこに出会ったコータは更に森への奥へと進んでいき・・・。
セミの鳴き声が響き渡り、木々は青々と茂って、小川が流れ。読みながら浮かんでくる夏の森の情景に、懐かしさや憧れの気持ちを抱いていると、いつにまにかワクワクするような不思議な冒険が始まっているのです。
この物語が面白いな、と思うのが「魔法のおふだ」の存在。ハートの形をしたクルミの殻を偶然拾ったコータですが、それこそが「魔法の世界」への入り口となる道具なのです。
そんなクルミの殻を見つけたら自分も「クルミおばば」の所へ行けるかもしれない、物語が終わってもそのおふださえ持っていれば再び好きな時に行けるのかもしれない・・・そんな期待感に胸を膨らませる子ども達の姿が目に浮かびます。
この「クルミ森のおはなし」は、シリーズを通して森の季節の移り変わりを描いてくれるそうです。そんな自然の美しさにも期待が高まりますし、何といっても作者の末吉暁子さんは「ぞくぞく村」シリーズや「ざわざわ村のがんこちゃん」シリーズの生みの親。ひとクセもふたクセもあるキャラクターが大きな魅力の一つになる事は間違いありませんね。おじいちゃんの思い出話というのも気になるところ。まずは第1作目で、魔法の森の入り口に立ってみるのはいかがでしょうか。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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