「がまんしたいけど むりなんです」
なきこちゃんは泣き虫です。目がきいんとあつくなったと思うと、もう涙がこぼれてくるのです。そうなると、もう止まりません。
「しく しく」「えーん えーん」「わーん わーん」
なきこちゃんの目からこぼれてくる大粒の涙は床にたまり、ベッドをぷかぷかと浮かせ、あっという間に家の外へあふれ出していきます。それでも涙は止まりません。なきこちゃんが涙の海を漂っていると、魚たちやペリカン、大きなウツボがやってきて声をかけてくれるけど、やっぱり涙は止まりません。やがてベッドの下をクジラがゆうらりと通りすぎ……。
子どもの様々な感情に寄りそった絵本を描き続ける絵本作家ザ・キャビンカンパニーのお二人が今回手がけたテーマは「涙」。なきこちゃんに限らず、子どもというのは本当によく泣きます。場所も時間も選ばず、大きな声でいつまでも。そんな子ども達みんなに伝えるように、絵本に登場するクジラは言うのです。
「たくさん泣いていいんだよ。おおきな海をつくりなさい」
涙の海はどんどん広がり、嵐を呼び、深くなり、やがて潮が引いていく。その景色のなんと美しく力強いことでしょう。くるくる変わる表情のなんと豊かなことでしょう。子どもたちは、いつかの自分の体験と重ね合わせ、心地良い疲労感を味わっているのかもしれません。
泣きたいときは泣けばいい。「泣くことを肯定する絵本」として5年の歳月をかけて生まれてきたこの作品。いつかの自分が。目の前で泣いている我が子が。そこかしこで海をつくっている子どもたちが、愛しくてたまらなくなってしまう一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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