ドイツのグリム童話と並んで有名な、17世紀末フランスの物語集。「眠りの森の美女」「赤頭巾ちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(ガラスの靴)」「おやゆび小僧」「ロバの皮」など。
1697年版の題に《過ぎた昔の……》とあるように,またほとんどが《むかしあるところに》と書き出されているとおり,「ペロー童話」というのは,基本的に「昔話」なのです.つまり,ある「作家」があるとき創作した「作品」というよりも,もともとは,いつからともなしに,親が子に,語り部が民衆に,何十年何百年ものあいだ語り伝え,語り継いできた「民話」とか「説話」とよばれるお話だったのです.
ヨーロッパでは,とくに17世紀後半,フランスのペローやイタリアのバジーレによって,そして19世紀にはドイツのグリム兄弟によって,このような口承説話を記録・収集し,読者・研究者にひろく提供する仕事が結実し,評価されるようになりました.中でも重要かつ有名なのが,「グリム童話」ですが,それより百年余りも早く,十七世紀の末に刊行されたのが「ペロー童話」です.グリム兄弟は,自分たちの『子どもと家庭のための童話集(メルヒエン)』の第一巻の初版(1812年)の序文の中で,先駆者ペローの「昔話』の,聞き書き叙述の簡潔さ・正確さを称賛し,ペロー童話集の類話の多くを自分たちの童話集に取り入れています.
(「訳者あとがき」より)
*《過ぎた昔の……》=『過ぎた昔の物語またはお話集・教訓付き』
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