驚いたことに安野光雅さんが詩人になった。絵本作家、書物の装丁家、エッセイスト、と多芸多才ぶりは喜寿を超えて
なお青年のようにみずみずしく、衰えを知らない。童話屋からは13冊の絵本とエッセー1冊が出版されているが、
「大志の歌」は池内紀さん(ドイツ文学者・エッセイスト)によると、
「画家、文人、詩人安野光雅にだけできた仕事であって、世界に二つとない歌の本だ」(週間ポスト9/30号)となる。
あるとき安野さんが電話をくれた。
童話屋の詩集「のはらうた」をイメージして詩を書いた。詩といっても詞、詞というより歌、
その歌というのは学校の校歌、寮歌、応援歌だという。それも人の世界のではなく、のはらの学校の校歌だ。
めだかや雀に学校があって校歌があるのなら、ガマ蛙やこうもりや山猫にだってあっていい。
ガマ蛙の学校は、茨城県筑波山村私立蝦蟇(がま)高等学校、ともっともらしい。
前を流れる桜川
後ろは深き筑波山
蓮咲く沼のほとりこそ
わが故郷の誇りなれ
痔の妙薬といつわりて
がまの油をこねくりまわし
あるは刀の刃をとめて
人をあざむく悲しさよ
その他 めだか小学校校歌や俵藤太高等学校むかで寮寮歌など34校の歌が作られ、学校ごとに校章がデザインされ、
その上各学校の生徒が一堂に会して、高らかに志の歌を披露する祭典が開かれるのである。
池内紀さんの紹介文を引用しよう
「ワイザツで、ただ慌しいだけの現代に、澄んだ涼しい、爽やかな風が吹きぬけたぐあいである。
『行きつ戻りつ考える/大人になったら谷を越え/遠くの沢に行きたいな/雲にならった みなの夢』
(乗鞍サワガニ小学校校歌)、このつぎ山へ行ったとき、サワガニ小学校の生徒たちと水辺で合唱するとしよう』
続きを読む