自由気ままなあおいくもは、ほかのくもたちが雨をふらせても、しらんぷり。 でもあるとき、世界のことが知りたくなって、海をわたり、街の上を飛びました。 そこで見たのは、人間たちのいさかい。そこであおいくもは、自分のからだを雨に変えて 地上を青1色に染め、幸福な世界をもたらします。
どう解釈すれば良いのか、とても迷いました。
ほかのくもが何をしても気にしなかった小さなあおいくもが、大きくなるにつれ、世界中のことが知りたいと思うようになります。
ある日、色の違う人間たちが互いに殺しあっているところに出くわします。あおいくもは「決心」して、自分がなくなってしまうまで雨をふらせます。雨にぬれた人々はみんなあおくなり、なごやかにくらすようになりました。
一読すると、めでたしめでたしのお話なのですが、どうしても気になることが2つあります。
一つは、みんなが青い人間になったから戦争をやめたかのように読めることです。
あおいくものなかを通り抜けて青くなってしまった飛行機を掃除している場面からも推察されるように、あおいくもがつけた色は洗い落とせるようです。そうなると、戦争をしていた人たちも、いずれはもとの白や黒や赤や黄の人間に戻ることになります。ですから、人間が戦うことをやめたのは、肌の色が違うことで争うのはアホらしいと気づいたからでしょう。それをきづかせてくれたのが、あおいくもなのです。
もう一つ気になるのは、なぜあおいくもは自分がなくなってしまうまで雨をふらせたのかということです。肌の色の違いで争っているくだらない人間のために、なぜ自らを消してしまう「決心」をしたのでしょうか。
「すきなように すきにいきていて、ほかのものが なにをしているのかなんて、ちっとも きにしなかった」あおいくもだからこそ、人間の自由や命を奪う「このひどいやりくちに おどろきあきれて」しまい、そのまま戦わせておくことが許せなかったのではないでしょうか。誰かのためではなく、自分の心が何もしないでいることを許さなかったのだと思います。
フランスで生まれ、二次大戦中はドイツ占領下で暮らしていたトミー・ウンゲラーのことです。自由の大切さや戦争の悲惨さ、虚しさを知らないはずがありません。
さっと目を通してしまうだけだと、肌の色が同じになったから戦争がおわり、雲は人間のために自分を犠牲にしたと読んでしまいそうです。そうなると、この絵本の評価は「あまりおすすめしない」になります。でもこのお話は、そういうことを表しているのではないと思います。
子どもに安易に読んではいけないと思いつつも、実は子どもたちの方がこの絵本の本質を読み取ってくれそうな気もします。どう扱ったら良いのか迷ってしまう一冊です。 (はしのさん 40代・パパ 男の子15歳、女の子13歳)
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