「強くなりなさい、アベラ」母親は最後にそういい残して、息をひきとった。村から歩いて何日もかかる遠い病院にいったのに、薬がなくて、何も手をつくせないままに死んだのだ。絶望とともに村に帰った9才の少女アベラを待っていたのは、冷たくなった幼い妹の亡骸だった。肉親をつぎつぎに亡くし、孤児になったアベラは、イギリスへの不法入国をたくらむ叔父にだまされて、ロンドンに連れていかれ、そこで放りだされてしまう。アベラは絶望のなか、母親の最後の言葉だけを心の支えにし、歯を食いしばって生きていた。そのころイギリスで、同じ年頃の少女が、母親の愛情と親子の絆を信じられずに苦しんでいた。苦しみさいなまれるふたつの魂がであったとき――。家族とは?親子の絆とは?人の幸せとは?人にとって本当に大切なことを問いかける、カーネギー賞受賞者による感動作。
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