スプーンは、手でにぎれて、そのくぼみで色々なものをすくいとる。
でも、スプーンにとって大切なのは、それを使うと上手に食べられるということ。
ひなぎくは真ん中が黄色く、くすぐったい香りがする。
でも、ひなぎくにとって大切なのは、白くあること。
雨にとって大切なのは?
草にとって、りんごにとって、空にとって大切なのは?
自分たちの身の回りのものと一つ一つ向き合い、
優しく語るその文章を読みながら、読者はゆっくりと思いをめぐらせます。
そしてその静かな時間を決して邪魔することなく、
それでも印象的で美しい絵が、私たちの形のない思考を助けてくれるのです。
1949年にアメリカで出版されて以来読みつがれているこの絵本。マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイスガードによって生まれたこの傑作は、内田也哉子さんの丁寧な翻訳により、日本でも幅広い年齢層の読者に愛され続けています。
子どもたちにとって、本当に大切なこと。
今、自分が本当に大切にしなくてはいけないこと。
何度だって確かめたい時。答えがわからなくなった時。
目の前にあるものをしっかり見て、耳をすましてみる。
誰かの声を聞いてみる。
この絵本を読んでみる。
すると、何回だって答えてくれます。
「あなたは、あなた。
あなたにとって、たいせつなのは……?」
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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