本書には、「世界一」の昆虫が次々と登場する。写真集だから一目瞭然、何がどう世界一なのかは、自分の目で確かめてほしい。
実は昆虫は身の回りにいる普通種もみんな唯一無二。本書を通じて、昆虫の凄さに気づいたならば、ぜひ身の回りの虫にも目を向けてほしい。生物多様性とは、たとえばこの虫の多様性のことなのだ、と実感できるはずである。
本書の写真を眺めてもうひとつおもしろいのは、日本人と欧米人の視点の違いだ。
日本の昆虫写真は細部まで光を回してフラットに見せるのが主流だが、英国人が撮影したこの本の場合は陰影をもたせて立体感を強調する。いってみれば浮世絵とレンブラントの絵の違い、といったところだ。
また、日本で昆虫の写真集を作ったらカブトムシやクワガタがたくさん並ぶだろうが、本書ではハチやアリなどの社会性昆虫の登場回数が多い。日本と欧米で興味の中心となる昆虫の種が異なる、というのも興味深い。
写真ひとつで、日本と欧米の自然観の違いが透けて見えてくる。そんな観点で、この写真集を楽しむのもいいだろう。
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