「大好きなおばあちゃんに帽子をプレゼントしたい」と考えた子どもたち。帽子屋さんに誤解され、計画は頓挫。飾り卵を持って話しに行き、誤解は解ける。日曜日、おばあちゃんはプレゼントの帽子をかぶって晴れ晴れと歌う。
創作の話なのかと思ったら違うんですね。本のカバーの見返しに、大きくなってからの実際のパトシリアとスチュワート、ウィンストンの3人が一緒に写っている写真が載っていました。当たり前ですが、作者のパトシリアさん、すごい! 写真と絵本の中を見比べると、全員の特徴を本当にとらえています。だから、きっと、おばあちゃんもこの絵のとおりだったんだろうなぁと、容易に想像できます。
本当に、この絵本の中では、背景についての文は、必要最低限しか書かれていないと思います。多分、あえて多くを語らず、でも作者のパトシリアさんは、絵で色々な真実を語りたかったんだと思います。ただ、私が言うのもおこがましいですが、普通の日本人では、絵が意味しているところを100%理解できないのではないかと、ちょっと心配しております。
コジンスキーさんは、元々は、アシュケナジ(ム)と総称される東欧や東ロシアに住んでいたユダヤ人で、ナチスの収容所の生き残りです。彼の左手首には、青色の入れ墨で囚人番号が刻まれています。それも、かなりの正統派のユダヤ人なんだと思います。着ている服が、謙虚な白いシャツに黒いズボン、そしてユダヤ人独特のショールを肩にかけています。また髭のはやし方からもそれが裏付けられています。
それが、ユーラおばあちゃんの言う「これまでの人生、そりゃつらい目にあってきなさったんだよ。」の言葉の意味です。
それを知っているかどうかで、またこの話の深みは違ってくると思いますが、仮に分からなかったとしても、肌の色や出身地、宗教の違いを乗り越えたうえでのコミュニケーションの話として、読後に温かさが残るのは確かです。 (汐見台3丁目さん 40代・ママ )
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