公園の木の下に白いベンチがひとつ。
いつも公園をきれいにしているおじさん、朝早く散歩に訪れるおじいさん、小さな赤ちゃんを連れたお母さん、そして放課後の子どもたち……。なんの変哲もないけれど、そこを訪れる人々に小さな憩いと安らぎを届けているベンチの1日の様子を、静かに淡々と描きます。「小さいけれど確かな幸せ」がある喜びをしみじみと感じさせてくれる、名作絵本です。
■担当編集者の打ちあけ話
「『ベンチがひとつ』をもう一度本屋さんに置ける状態にしてほしい」絵本コーディネーターのさわださちこさんほか、いろいろな方からお願いされていました。丁寧で心のこもったあたたかい絵と、シンプルで無駄がなく、美しい文章。何回も読み返したくなるこの絵本を、ぜひもう一度世に送り出したいと……。新装版の刊行が決まり、「うれいしいです」というメッセージもたくさんいただきました。
今回この絵本を読んで、いつも変わらずにいてくれるもののありがたさを思いました。いつ訪ねていってもあたたかく迎えてくれるおじいちゃんやおばあちゃん、ふるさとに帰ったときに訪れる小学校のグラウンドや鉄棒……、自分が変わっても、変わらずにいてくれるものが、どんなに心の支えになるか……。このベンチもきっとそうだと思いました。きっと自分が年を経て、そういうものを失う機会が増えたせいなのでしょう。
丹念に描かれた絵を読むおもしろさと同時に、読むたびにいろいろなことに気づかせてくれる絵本です。ぜひ一度ご覧ください。(K)
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