「ふきまんぶく」や「とべバッタ」などちょと普通ではない迫力の絵本がたくさん出ている田島征三。7,8年前から伊豆高原に住んでいるらしい、木の実を拾う生活をしているらしい、そして拾う木の実の量が半端じゃなく、制作にも使っているらしい。なんて気になる話がたくさんあって、どんな絵本が出来上がるんだろうと思っていたら。
田島征三、木の実を使った渾身の傑作「ガオ」。2001年11月号に「こどものとも」で発表されたものが今回待望の書籍化です。
無数の木の実を使って描かれた動物のインパクトがまず凄い。赤や黄色や紫のきれいな木の実、よく見ると大きさやへたのつき具合やしぼみ方など全部区分けされている。それらを眺めるだけでも圧巻です。そしてそれに負けじとストーリーも凄い迫力。主人公は「げんきなやまいぬ」。ある日、やまいぬのからだがばらばらになり、からだの中から「げんき」が飛び出していってしまいます。飛び出した「げんき」は恐ろしいとりに化け、残ったからだは6ぴきのへびになってしまいます。そしてとりはへびを次々に食べてしまい、とうとういっぴきだけになります。残ったへびが襲われそうになった時、あおい大きなカエルに化けます。すると恐ろしいとりは・・・。「げんきなやまいぬ」は無事もとに戻れるのでしょうか。
こんな可愛らしい木の実を使っているのにこの迫力、力強さは田島征三だから。こんなに激しい世界、でも読んでいると、どきどき興奮してきてパワーをもらえる様な気がします。きっと創っている本人が自然や木の実のパワーを直接感じながら最大限表現しているからなのでしょう。こういう力強い本を読んだ後の爽快感がたまりません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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