ナンセンス絵本の作者として人気の内田麟太郎さん。そんな内田さんの子ども時代は悲しみと憎しみの中に生きていたと言います。
そしてこのお話は自伝的な絵本として作られました。
幼い小熊の「ぼく」を残して死んでしまった母。悲しみの底でうずくまる「ぼく」。やがて家族ができ、おじいさんになり娘が子どもを抱いている。−ママ、ママ。
「ぼく」は涙があふれてきた。「ぼく」の悲しみよりずっとずっと深かったかあさんの悲しみがみえてきた・・・。
小さい子どもの立場、母親の立場からダイレクトに悲しみが伝わってきて読んでいてちょっとつらい程。特にこぐまが雨にぬれている時の目を見ていると具体的ではなくても「悲しみ」というものを全身に感じてしまう。それでも最後には母のはるののはらの心、母の声、幸せも感じる事ができます。もっと早くに見えていれば・・・と思わずにはいられません。この絵本に添えてある内田さんの言葉に全て表されています。
「どの子も無条件に愛されてほしい・・・それがいま私の一番の願いです。悲しい時をすごさなければならなかった子は自分を愛せない子になります。それを取り戻せるのはただ優しい人との出会いだけです。」
色々な立場の人に読んでもらいたい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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