人気小説家が描く、怪談えほんシリーズ!
『百鬼夜行シリーズ』などで知られる作家、京極夏彦が描くのは、古い日本家屋にひそむ恐怖……
かやぶき屋根の、木でてきた、とても古い家。
おばあちゃんとふたり、そこで暮らすことになった男の子。
おばあちゃんの家は、とても天井が高い。
大人が台にのっても、はしごにのぼっても、届かないくらい高い。
ずーっと上のほうに、暗がりがたまっていて、その手前に、太い木の梁が渡っている。
「うえのほうは くらいねえ」
「でも ほら したのほうは あかるいよ」
下の方が明るいなら、まあ、いいか。
でも、やっぱり、気になる。
頭の上でかたまりになっている暗がりを、何度も見あげる。
そしてその日、男の子は、梁の上の暗がりから自分を見下ろす、それを見つけた――
顔のはっきり描かれないおばあちゃん。
家の中をうろつく、おびただしい数の猫。
わずかに開いたふすま。
光のとどかない廊下の向こう。
なんの変哲もない風景を切り取ったはずのページさえ、なんだかひどく不気味に見えます。
「なにかひそんでいるんじゃないか?」なんて、うすぼんやりと広がる黒に、目を凝らしながら読み進めていくと……
背筋が、ひやり。
『暗い』って、こわいなあ……
そんな、原初的な恐怖を、いやおうなく思い出させる一冊です。
「みなければ こわくないよ。みなければ いないのと おんなじだ」
おばあちゃんはそう言うけれど、それじゃあもしも、見てしまったら?
わかっているのに目を凝らし、わかっているのに探してしまう。
この絵本の暗がりからは、ああ、どうしても目が逸らせない……
(堀井拓馬 小説家)
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