今から200年ほど前のこと。デイヴという一人の奴隷がいた。デイヴは粘土で壺をつくって暮らしていた。彼の手にかかれば、ただの粘土もたちまち立派な大きな壺に変わっていく。1800年代のアメリカに実在した人物を描くノンフィクション。
私たちにとっては、それはただの土。踏んで歩く地面。でも、デイヴにとっては、それは大事な粘土。奴隷のデイヴは、粘土でつぼをつくって暮らしていた…。アメリカに実在した人物を描くノンフィクション絵本。
2010年のコールデコット賞オナー賞受賞作品。
ブライアン・コリアーは、2002年に「キング牧師の力づよいことば」、2006年に「ローザ」でもコールデコット賞オナー賞を受賞しています。
原題は、Dave the Potter: Artist Poet Slave
物語は、今から200年位前、アメリカ、サウス・キャロライナ州にいた奴隷の陶工であるデイヴを描いたもの。
彼は、陶工であるとともに、詩人だったようです。
その壺に刻まれた詩が、心に響きます。
「わたしの家族はどこなのか?
すべての人―そして国に、友情を
―1857年8月16日」
「十字架を背負ってこのつぼをつくったのは私
悔い改めない者は滅びるだろう=」
奴隷であるのに、文字が書けるというのは、至極稀なはずであって、しかも、こんな風に壺に刻むという行為は、極めて危険な行為であったに違いありません。
おそらく、その豊かな才能のお陰で、少しばかりの自由を手に入れていたのでしょう。
そんなことに想いを馳せるとき、その奴隷の歴史を考えずにいられなくなります。
丹念に壺を作る工程を描いているのですが、その所々に鎖や足かせ、畑で綿を摘む奴隷達が描かれており、
デイブがかなり特別な奴隷であったことを示しています。
ブライアン・コリアーの骨太の絵は、まさに、黒人の歴史を描くのに最適なもの。
シリ−ズと言うわけではありませんが、ブライアン・コリアーの作品を読むことは、奴隷制度を考え、人の
尊厳とは何かということを考えるきっかけになると想います。
小学校高学年位が対象の作品です。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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