「みにくいあひるの子」は、数多いアンデルセン童話のなかでも、人生の味わいの深い代表作の1つです。あひるのひなにまじって生まれた白鳥のひなは、ほかの子と毛色も鳴き声もちがっているため、いつもあざけられ、のけものにされています。が、やがて、「みにくい子」は成長して美しい白鳥となり、大空へはばたいていきます。
アンデルセン(1805〜1875年)は、デンマークの貧しいくつ屋の子に生まれ、俳優・劇作家・詩人をこころざして失敗、小説「即興詩人」でようやく作家の地位を得ました。童話作家としての名声がたかくなったのも、「人魚姫」をおさめた第3冊めの童話集からでした。ディズニーも貧しい新聞配達少年、一画工から身を起こし、世界のアニメ王になるまでには、いくたびもの試練をへました。このアニメ化には2人の人生が共鳴しているのです。
文の瀬尾七重さんは、「ロザンドの木馬」などの作品で知られる童話作家です。
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