今日、あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。
こんな素敵な質問から始まるこの本は、詩人である長田弘さんの代表詩「最初の質問」の世界を、画家のいせひでこさんが、絵本というかたちにした一冊です。
ページを開くと、やわらかい言葉でゆったりと語りかけてくる質問に出会います。それは、毎日の生活の中で、いそがしさにかまけて忘れかけていること、見ることを忘れてしまっていることを、思い出させてくれるようなとぎすまされた質問ばかりです。
そして、いせひでこさんの、のびやかで美しい絵は、全身と五感を駆使して、その質問たちに精一杯こたえているようです。言葉と絵がたがいに響きあい、豊かで大きな物語世界をつくりだし、読んでいる私たちはぐっと引きこまれていきます。
空を見上げること、風を感じること、鳥の声に耳をすませること、雨粒でいっぱいのクモの巣に目を見はること……。ページをめくっていると、この世界はこんなに美しいものにあふれているんだと気づき、ワクワクする気持ちになります。同時に、自分が大切にしていることってなんだろう、大切な人にはきちんと言葉で気持ちを伝えたい、と考えや想像がどんどんふくらんでいきます。そして、大切な人にも、同じ質問をしたくなるかもしれません。
また、この絵本に何回も登場する、大きくどっしりした木の絵に惹かれる方も多いのではないでしょうか。いせひでこさんの絵本には、木をモチーフにした作品が多く「ルリユールおじさん」、「大きな木のような人」、「まつり」、「チェロの木」などもぜひ手にとってみてください。ゆるやかにつながっている物語もあり、それを見つけるのも楽しみのひとつです。
(光森優子 編集者・ライター)
続きを読む