ぬけるような青空。ふわふわ空にちらばる白い雲。どーんと広くて青い、海。
この海が、あの震災のとき、牙をむいて襲いかかってきたとは信じられないほどの穏やかさです。
本書は、フォトジャーナリストである著者が、2011年の大震災の後、東北の地を訪れて撮影した写真と、子どもたちへのメッセージをつづった写真集です。
枝を広げ、すっくと立つ細い木。
くったくない子どもたちの笑顔。
夕暮れ時、まるで月のように空にあがるサッカーボール。
鮮やかな色彩で力強く描かれた大漁旗。
空に届きそうなくらい、高くこがれるブランコ。
写真の中の青い空は、すべての想いや痛み、時間を包み込んで広がっています。そんな写真を眺めていると、言葉で説明できない、いろいろごたまぜになった感情が突き動かされます。
世界中の紛争地をめぐって写真を撮りつづけている著者は、どんなときでも、どんな状況でも空を見上げると、そこには雲が浮かんでいる、と言います。そして、もっとゆったりと、もっと自由に生きてもいい……雲が教えてくれることはたくさんある、と。
自分の上に広がる空は、日本だけでなく世界のいろんな国の上にも広がり、ずーっと昔からこの地球の上に広がってきました。ページをめくるうちに「切り取られた空」ではなく、世界や時間をつなぐ、広くて大らかな空が心の中に広がってゆきます。
きっと、今日の空を見上げたくなります。
(光森優子 編集者・ライター)
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