戦後、焼け野原になった東京を見て何かしたいと思い、光と影で表現する影絵をつくり始めたという藤城清治さん。
平和な時代の日本に起きた2011年の東日本大震災後、自分ができることは何か、と改めて考えたとおっしゃいます。
この地球に生きているというよろこびを描きながら、生きていることは素晴らしく何があってもやっぱり地球は素晴らしい、こんなこともある、あんなこともあるとたくさんの方に少しでも伝えることが自分の使命なのだと。
現在も藤城さんはその魂の込められた素晴らしい作品をみなさんにお届けするため、日々制作活動に励んでいらっしゃいます。
本書は、これまでの藤城作品とその軌跡を第一章から第十章まで様々な角度から焦点をあて紹介している藤城さんの創作活動70年間の集大成であり、永久保存版の作品集です。
すべての章には、藤城さん自身の言葉で語られるインタビューが収録されています。
本書のために厳選された珠玉の作品たち。どれも藤城さんの作品を語る上で欠かすことのできないものばかりです。
影絵との出会い、心に残る日本のふるさとや2011年以降向き合ってきた東日本大震災の被災地風景、そして、代表作でもある宮沢賢治とアンデルセンの物語との共通点、藤城さんの長年の夢であった五感を使って楽しむ光と影と水で演出された「藤城清治美術館」(2013年6月オープン)のことなど最新情報も収録されています。また、ご自身が魂を削り、全身全霊で挑みつづける作品たちが生み出されるアトリエの風景やその独特の手法、影絵以外で大活躍された藤城さんの多彩で意外な過去のお仕事や藤城さんに多大な影響を与えた人物、きっかけとなった「暮しの手帖」挿絵についてなど藤城作品、藤城清治さんについて知りたいことすべてがここに結集されています。
特に、藤城さんが被災地の現場まで赴きデッサンをし、影絵として完成させた作品たちの鎮魂の祈りと復興の希望は、永遠に打ち寄せるさざ波のように静かにそして力強く見る者の心にずしりと残ります。
藤城さんが描く美しい光と影で表現された、自然と命の賛美。
ファンの方も作品をまだご覧になっていない方にも手に取っていただきたい1冊です。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
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