「ココロノヤサシイ オニノ ウチデス。ドナタデモ オイデクダサイ。
オイシイオカシガ ゴザイマス。オチャモワカシテ ゴザイマス。」
鬼に生まれたけれど、できるだけ良いことをしたい。人間たちの仲間になって、仲良くくらしていきたい。
いつもそう願って暮らす心の優しい赤おに。でも警戒心の強い人間たちにはなかなか受け入れてはもらえません。
だって彼は赤おに、なのですから。
「そんなことなら、わけないよ。こうすりゃかんたんさ。」
自暴自棄になっている赤おにの姿を見て、親友である青おには、ある提案をするのです・・・。
「日本のアンデルセン」といわれる浜田廣介の、友情をテーマにした不朽の名作。
その絵を野村たかあきさんが木版画で描いた本作品は、20年の時を経て今回新たに編集されよみがえった一冊です。
鬼をテーマにした作品を数多く手がけられてきたという野村さん。
昔話らしい大胆で力強い筆致の中でも、鬼たちの表情は純真で優しく、時に切なく描かれています。
繊細に掘られた瞳に映る、青おにの友に対する気づかい、赤おにの揺れる心。何度も読んだお話のはずなのに、二人の友情がたどり着くその結末には、やっぱり胸がキュッと締め付けられるのです。
さまざまな画家さんによって描かれている「泣いた赤おに」、どの作品にもそれぞれの魅力があることでしょう。
この作品には、赤おにの涙は登場しません。でも赤おにの泣き声は確かに、聞こえてきます。
友との友情を通して得ることができた人間との交流。引き換えに失ってしまった友の存在。
思いを抑えきれずにすすり泣く赤おにの背中は、きっと読む人の心に深く刻まれることでしょう。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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