「にんげんは おかしな いきものだ。どうして あんなにも しぬことを こわがるんだ。」
子どもにとって「しぬ」っていうこと。
途方もなくて、こわくて、悲しくて。考えれば考えるほど眠れなくなって、涙が出てきたり。
当たり前のことです。誰でもこの気持ちに経験があるはずです。
でも、もし「死」というものと隣あわせの毎日を送っていたとしたら?
るるが住んでいるのは病院。生まれた時からずっとここにいます。
かわいそうね、と時々言われるけど、るるはワンピースとタルトが好きな、どこにでもいる普通の女の子よ、と答えます。
ここでは、毎週子どもがひとりずついなくなっていきます。
みんなは地下のボイラー室に住む怪物が子どもの魂を食べていると噂をしています。
名前はウーギークック。
るるはそんなことをやめさせるために、ひとりでウーギークックに会いにいきます。
パンやハム、さとうや塩、花を持っていって魂のかわりに食べてもらおうとします。
でもウーギークックは言うのです。
「だめだ だめだ。たましいのほうが おいしい」
怖がる人間の気持ちがわからないウーギークック。
それでもるるは会話を続け、自分がいつ「しぬ」のかと聞きます。
それは・・・。
日本テレビ系ドラマ「Woman」に登場し、大きな話題となったこの絵本。
見るからに怖い姿をしたウーギークックとは何を象徴しているのでしょうか。
極限ともいえる状態、それでもるるは生きることを諦めません。
小さな体をうち震わせながら現実を受け止め、打ち勝っていきます。
「こわいは おいしい。かなしいは おいしい」
ウーギークックの最後の言葉は、人間の感情というものの奥深さと豊かさを表しているのかもしれません。
他にはない話の展開、そして不気味だけど美しく可愛らしく描かれた絵。
とても印象的なこの絵本を読みながら、不思議と心の奥底に小さな力が生まれてくるのを感じます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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