大きな荷物をもった、小さなふたりが手をつないでぽつん。
ひろーい背景の中で、不安げにこちらを見つめています。どうしたのでしょう?
さっきまで、おねえちゃんはかあさんのコートをしっかりつかまえていたのに。
はじめてやってきた大きな駅では、めずらしい人や見たことのないものであふれています。
しゅしゅぽっぽ シュシュポッポ
なんておもしろいところなんでしょう。ふたりはあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ。
あれ?アレ?あれあれ?かあさんがいない。かあさーーん。
どうしよう。ドウシヨ。姉と弟、小さなふたりの冒険がはじまります。
あっちにいって、こっちにいって。心配したり、ケンカしたり。
どんなに探してもかあさんが見つかりません。おなかすいた。
・・・ずっとこのまま忘れられたままだったら、どうする?
がんばれ、まいご。きっとだいじょうぶ。
手に汗をにぎりながら見守っているのは、絵本の中の幼い姉弟?
それとも小さい頃の自分の姿を見ているのでしょうか。
どこか懐かしい風景の駅の中で走り回る姿は、誰もが体験のある「はじめてのまいご」の記憶を呼び覚まします。
でも、子どもだって泣いてばかりじゃありません。
しゅっぱつ!シンコウ!
心に残る温かなタッチで描かれたこの絵本は『つみきのいえ』で話題となった加藤久仁生さんの、また違った魅力の味わえる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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