「こんとん」 みんなの声

なにも描かれていないようにも見える表紙の、ただならぬ雰囲気に惹かれ、手に取りました。
中国の神話に登場する神または怪物「こんとん」を元にした作品とのこと。
誰でもないから、何にでもなれる「こんとん」。いつも空を見上げて笑っている。
哲学的で、読む人に捉え方を委ねてくれる作品かなと思いました。読むたびに違った印象を受けそうなおはなしです。

　　　名前が　ないので

　　　だれでも　ない。

　　　だれでも　ないのに　　

　　　だれでも　ないから

　　　なんにでも　なれる　

　　　それが　こんとん

　　　ということなんだなあ。
　

得体のしれない　こんとん　ですが、

　　　”こん　とん

　　　こん　とん　　

　　　きみのことが　すきだよ”

好きになるって理屈は、いらないと思いました。

好きになるって　とても　幸せなことだと　思いました。

中国神話に登場する怪物、渾沌のエピソード。
「荘子」による寓話のようですね。
実は、目鼻口などを持たない、とらえどころのない存在。
そんな渾沌に会いに来た帝たちが、それでも表情を察知し、
目鼻口などをつけてあげた悲劇。
ただ、その光景も含めて、終始ぼんやりと語られます。
あとに残るのは、渾沌の、何とも言えない愛らしさ。
きみのことが好きだよ。
語りのメッセージが印象的です。
ぼんやりしているのに、なぜだか残る存在感。
小学生くらいから、大人まで、ただ、感じてほしいです。

だれのものでもないから、
なんにでもなれる。

いつも空をみあげて、
わらってる

なぞめいていて、
いとおしい、
ものいわぬもの、
こんとん。

と、帯に書かれています。

思春期の子どもに、そして思春期の子を持つ親に読んであげたい。

私もこんとんが愛おしい！