戦後70年を迎えた今年、高齢化によって戦時中のことを知る人が減少していることが問題化している。どのように子どもたちに戦争の悲惨さを伝承していくか。
それは戦後生まれの私たち全員が考えなければならない問題だろう。
爆弾が落とされ、街が燃え上がったことを知らない私たち。食べ物がなく、飢えてなくなった人がいることを知らない私たち。銃剣で子どもを殺したことも、殺されたこともない私たち。愛する人を戦地に送りだしたことのない私たち。その人が帰ってこなかったことさえ知らない私たち。
そんな私たちが、どのように戦争はよくないんだよと伝えていけばいいのだろう。
安保法案を推し進めようとする政治家たちの多くも戦後生まれだ。それでも、戦争までの距離を何歩も縮めようとするのはどうしてだろう。
知らないからできるのだろうか。
そうではないような気がする。
知らなくても、私たちは想像できる。戦争のことを想像できる。燃える街のことも殺したり殺されたりすることも想像できる。
ちいさなきっかけで。ちいさな言葉で。
それがこの絵本なのかもしれない。
詩人のたにがわしゅんたろう(谷川俊太郎)さんがやさしい日本語で、戦争反対をうたった絵本。
ひらがなだけで書かれてはいるけれど、最初は大人が読んであげるのがいいかもしれない。
言葉のリズムが子どもたちに想像の翼を広げさせるはず。
次は子どもたちが自分で読んでみると、いい。声を出して読んでみると、いい。
想像の翼は、きっと強く大きくはばたくだろう。
「せんそう しない」。
書かれていることは、少しも難しくはない。何故、「せんそう しない」かが明確にわかる。
誰も殺したり殺されくないからだ。
そんな簡単なことが、国を守るとか子どもを守るみたいな、あるいは法案説明の難解な答弁で歪められていくのは、おかしい。
子どもたちに国会での大人の声が理解できるだろうか。
えがしらみちこ(江頭路子)さんの描く、男の子と女の子。
この子たちの未来を。私たちは守れるだろうか。