この『戦争は、』は、本のジャンルでいえば絵本にはいるのでしょうが、
絵本と言い切ってしまうには躊躇いがあります。
子供たちがその主な読者層である絵本ではないと思うからです。
もっといえば、この世界を動かす大人たちにもぜひ読んでもらいたい、
そんな作品です。
文を書いたのは、ポルトガルを代表する文学者であるジョゼ・ジョルジョ・レトリア。
絵は、彼の息子の画家アンドレ・レトリアが描いています。
ここには物語があるわけではありません。
「戦争は、」で始まる言葉の断片で綴られています。
はじまりはこうです。
「戦争は、日常をずたずたにする。」
この言葉の前に数ページ、絵だけで進んでいきます。
押さえた、やや暗めの色調の、どんどん怪しいものが大きくなっていく、
そんな数ページにドキドキしてきます。
でも、戦争はそういうことに気付かないまま起こってしまいます。
そういう不穏さが最初の数ページに凝縮されています。
「戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧にする」
戦争は、そんな言葉すら飲み込んでしまうように思います。
「戦争は、」のあとに、どんな言葉を書くのか
まるで試されているような絵本です。
私なら、こう書きます。
「戦争は、人の心を殺してしまう」。
もし、あなたなら「戦争は、」のあとにどんな言葉を続けるでしょう。