みどりは目に優しい色だといわれています。
初夏の頃の若葉のあざやかな緑を表わす夏の季語に「新緑」があります。
俳句の世界では、その他に中村草田男の「万緑の中や吾子の歯生え初むる」で広く愛用されるようになった「万緑」という季語もあります。
「歳時記」にはこの季語に「木々の緑が深まり、生命力に溢れる様子」と解説がついています。
みどりには、優しさだけでなく、いのちの生き生きとした姿を感じさせます。
この絵本の表紙も、そうです。
荒井良二さんのみどり色を基調にした森の絵が目をやさしくすると同時に、ページの中へと引き込んでいきます。
中には、詩人長田弘さんの文が、これもまた不可思議な呼び声となって、私たちを惹きつけます。
「きみの だいじなものを さがしにゆこう」
「きみの たいせつなものを さがしにゆこう」
みどりの深い森の中に、その答えはあるのでしょうか。
色や光や匂いや笑い声、いろんなものを見つけます。
そして、本。子どもの時にとても好きだった本。
「その本のなかには きみの だいじなものが ある。ぜったいに なくしてはいけない きみの思い出がー」と、声が教えてくれます。
本の詩をたくさん書いてきた長田さんだからこそ書ける詩の一文のように感じました。
そして、ふたたび森のみどりの中に私たちはいます。
大事なもの、大切なもの、それはずっと探し続けるものでもあります。