最後の章を読むまで、昌次を取り巻く世界と、昌次の生き生きとした日々に、この物語の背景となる時代を意識出来ませんでした。
タイトルの「ゆびきり」にも甘いものを感じていたのですが、最後に描かれた東京大空襲のシーンで、いきなりそれまでに積み上げてきた世界が崩れ去ってしまいました。
東京大空襲までの3年間。誰もが地獄のような出来事を想像もしないで暮らしていたのです。
もも子とのゆびきりは、いきるか死ぬかの際のゆびきりだったのです。
裕福でもないながら一生懸命生きてきた昌次家族も、裕福な暮らしをしていたみどりの家族も、学校の友達も、一様に地獄のような世界に放り込まれたのです。
当たり前の生活がいかに大切なものか、痛烈に感じさせられました。
早乙女さんの思いが凝縮された作品でした。