柳田国男さんの名著『遠野物語』の絵本化シリーズ。
題名から霧に包まれたような印象ですが、「迷い家」なのですね。
遠野地方小国村に伝わる不思議な伝承です。
三浦家の女房が、フキ採りで迷い込んだのが立派な屋敷。
座敷には膳が並んで、鉄瓶の湯が沸いているのに、誰一人いない、
この状況、かなりホラーです。
もちろん、逃げ帰った女房ですが、後日川を流れる、あの膳に並んでいた椀。
それが、不思議な椀だったという訳です。
迷い家は、訪れた人に幸運を授けてくれる。
でも、その場所はわからない、という、その存在感がすごいです。
近藤薫美子さんの絵は、深い森の中や、静まり返った座敷などを映し出していますが、
そこここに、何かいる雰囲気の絵が、その世界観そのものです。
京極夏彦さんの文章は語りの味わい、ぜひ、じっくりと音読して楽しみたいです。