私の世代、昭和30年代生まれであるが、で「かっぱ」といえば、水木しげるさんの『河童の三平』がすぐ頭に浮かぶ。
あるいは、鳳啓介と京唄子の漫才コンビでよく京が相方の鳳に対して「カッパ」と罵倒していたことも思い出す。
その当時かっぱには市民権があって、かっぱというだけでどういう形態の生き物(妖怪?)かということが想像できたものだ。
現代の子どもはどうだろう。
柳田国男の『遠野物語』を絵本にアレンジしてシリーズ化されていて、その中の一冊が「かっぱ」を描いた作品になっている。
「遠野の川には、河童が多く棲んでい」て、この川に棲む河童は「他の土地と違って」顔が赤いという。
こういう時の「赤」はなんとなく怖い。
最初、川のふちに付いた河童の足跡を見つけた子どもの後ろにそおっと佇む赤い影などは本当に怖い。
また別の言い伝えとして、馬にいたずらをしようとして捕まった(その容姿の割にはあまり強くないようだ)河童のそおっと差し出された赤い手は怖いけれど、村の人に二度といたずらをしないと約束して逃がしてもらった話など、なんだかかわいそうになる。
あるいは、村の娘に生まれた河童の赤ん坊の話。最初は怖い話の気配がするが、その子を棄てにいった村の男が見世物にしてしまおうかと悪知恵を働かせるなど、もしかした人間の方が河童よりよほど悪い。
この男に売られることなく、この赤ん坊はいなくなってしまったそうだが、河童であったのかもしれないが、その方がずっと仕合せだったにちがいない。