オオカミと聞くと悪い者の代名詞のように思われがちですが、「本当にそうなの?」と考えさせられる絵本でした。
ヒツジやニワトリを襲うオオカミは、確かに人間にとっては排除すべき存在ですが、果たしてオオカミがいなくなればどうなってしまうのか。
人間と自然との共存の難しさ、また生態系をむやみに破壊することの恐ろしさを痛感させられました。
日本でも、毎年秋になると耳にする熊出没のニュースも、同じような問題をはらんでいます。
人間の環境破壊の為に、エサが激減して山を下りて来たが為に射殺される熊を見るたび、複雑な思いに駆られます。
オオカミのタオは強くて勇敢で頭がいい。正々堂々としていて仲間を大事にする。
読みながらシートン動物記の『オオカミ王ロボ』の話や、椋鳩十の『大造じいさんとガン』の話を思い出しました。
きむらゆういちさん自らの力強い挿絵で、とても引き込まれる作品でした。
また、この作品を通して「モンゴル絵本プロジェクト」というものを知りました。
モンゴルを題材にした作品では『スーホの白い馬』くらいしか知りませんでしたが、これを機にもっとモンゴルについて知りたくなりました。