白い、何も書かれていない紙があるとしよう。
そこに色とりどりのペンでなんでも描いていく。うずまきだって、ギザギザだって、ただまっすぐな線だって。
もちろん、ひらがなも漢字も、英語だっていい。
子供たちの世界はそんな世界なんだろうな。
書いても描いてもまだまだ描ける。
児童文学者ひこ・田中さんのこの物語を読んで、そんな感想を持った。
小学5年生になったばかりのルカという男の子がこの物語の主人公。
大の親友安田くんとか幼馴染のナナとか転校生のカズサとか友達もたくさんいる。
でも、ルカはこうも思っている。
「幼くはないし、大人でもないってわけ」。
だから、いろんなことが疑問だったりする。
そのたびにインターネットで検索なんかする。
ルカは昔の子供ではない、今の子供。
そんなルカが家にある「本部屋」、そこは壁一面に本が並んでいるところ、でまだカバーがされたままの本を5冊見つける。
どうも昔、お父さんかお母さんが子供の頃に読んだ形跡のある本みたい。
それが『小公女』と『あしながおじさん』。
ルカはこの2冊の本を読むながら、たくさんのことを考えていく。
100年以上前に書かれた本を読むことの不思議、今出版された本ではなくお父さんたちの時代に書かれた本を読む難しさ。
そんなこととか目にするさまざまなこととか、ルカの心の白いページはどんどん埋まっていくのがとってもうらやましい。
きっとこの本は小学5年生の読者と年をとった読者とはちがう感想になるのだろうけれど、本はそんなことで不公平になったりはしない。
いい本はその人にとってのいい本だから。