心をもった赤い風船。
風船と心通い合わせる少年。
風船は、少年の心の鏡なのだと感じました。
絵が少しさびしいのです。
少年は一途なのです。
風船は、少年に従順だったり、奔放に飛び回ったり。
どこかに少年の希望を代弁しているようでもあります。
少年を取り巻く人たちにとって少年はどんな存在なのでしょう。
決して疎外されているようにも思えないけれど、少年の心とかみ合ってはくれません。
風船とともに少年には出会いがあります。
風船を割られるという悲しい現実があります。
風船が割れたりしぼんだりするのは当たり前なのに、この絵本の風船はどうして心に響くのでしょう。
この絵本ではどんなに小さく描かれていても、赤い風船の存在感が見る目を圧倒します。
風船の位置を見ながら、少年の心がすうっと伝わってくるのです。
いわさきちひろワールドです。
割れた風船と少年を迎えに来る色とりどりのたくさんの風船。
その風船たちとともに少年は空に飛び立ちます。
その象徴性は映画的ですが、理屈なしに素晴らしいと思いました。