富安陽子さんが紡ぐ、満開の桜の幻想譚です。
林の中の尾根道を一人で歩いていた「わたし」は、深い谷に気づきます。
それが、満開の桜の谷だったのですね。
誘われるように降りた谷にいたのは、花見中の色とりどりの鬼たち。
その輪の中に誘われ、やがて、かくれんぼにも。
鬼じゃないのに鬼になってしまったというのも愉快です。
花見のお重が、思い出の母のお弁当に酷似していることも、
かくれんぼの時に現れた亡き人たちも。
満開の桜吹雪の幻想でしょうか。
さくら やなぁ
さくら とてぇ
さくら ゆえぇ
さくや ちらすや かぜまかせぇ
富安陽子さんならではの感性が響き合います。
桜はこんな物語も抱いているのですね。
小学生くらいから大人まで、桜に心を開いて感じてほしいです。