この絵本に文章はありません。すべてが白黒の絵で説明されています。白黒の絵の中に、実は女の子がさしたかさだけが赤く描かれています。
文がないおかげで、読み手は赤いかさを目で追いながら、より一層の自らの想像力を駆使してページをめくっていくことになります。
途中で出会ったお友だちとそのお母さんとはどんな話をしたのでしょう。跨線橋の上から通り過ぎていく貨物列車を見る女の子、ドーナツ屋のウィンドウをのぞいている女の子。何を思っているのでしょう。
文章がなくても、いや文章がないだけに、女の子の気持ちがわかるだけでなく、彼女が歩いている街や車などの音も聞こえてきます。
お父さんにかさを渡したときの、女の子のちょっと得意げな表情が印象的です。
裏表紙に描かれている、お土産のドーナツの箱を持ちながら、お父さんのかさに一緒に入っている女の子の後姿が、とても幸せそうで、うれしくなります。
幼児や小学生低学年の子どもたちが、どんな風景や会話を思い浮かべながら読んでいくのか、とても楽しみです。