なんと美しい絵本だろう。
絵本でいう美しいは、単に絵がきれいということではないだろう。
文(この絵本でいえば、それは詩の言葉のようでもある)と絵が見事に合致し、音楽を奏でるようであることだろう。
文を書いたのはカナダの詩人でもあるジョーダン・スコット。
彼自身が吃音者で、この絵本は彼自身の体験にそって生まれたものだそうです。
この絵本の少年のように、朝起きたら「ことばの音」だらけで、しかし、自分にはいえない音があることにいつもちぢこまっている。
学校に行っても、あてられないように願い、あてられてもうまく口が動かない。
そんなある日、少年の父親が彼を川に連れていった。
父親は川を指さして、「あれが、お前の話し方だ」と言う。
川は泡立ち、波うち、渦をまき、くだけていた。
「お前は川のように話してるんだ」
このシーンの、静かに目を瞑る少年の顔がいい。
光にきらめく川に半身をいれた少年の後ろ姿がいい。
少年は気づくのだ。川だって、自分と同じようにどもっている。
でも、その先にあるのはゆったりとした流れだ。
絵を描いたのは、シドニー・スミス。
なんと素敵な川を描いてくれたのでしょう。
スコットが見た川もきっとそうだったように、読者もこの川に自身の姿を投影できるのではないでしょうか。
吃音者だけではなく、どんな人にも嫌なことであったり苦手なことがあるでしょう。
そんな時、この絵本の川を思い出し、こうつぶやくといい。
「ぼくは、川のように話す」。