人気作家の寺村輝夫さんのとっても楽しい物語が、現在は廃盤となっていることを知り、非常に勿体ないと思い、レビューを書くことにしました。図書館にはあると思うのでぜひお読みくださいね。
動物のタヌキの話じゃありません。
「佐貫歯科医院」のさぬき先生なのですが、子どもたちからは「たぬき先生」と呼ばれています。
夏のある雷雨の日、たぬき先生の前に不思議な少女が現れます。
どう見ても小学3年生くらいにしか見えないのに、30才だ、看護婦として雇ってくれというのです。名前は回文の「なりたりな」
そういうわけで、「リナという三十才の子どもは」という愉快な表現になります。
リナはたぬき先生が秘密にしている虫歯のことをなぜか知っています。
リナが治療をしようとするのですが、診察台に座ることを拒むたぬき先生に、
「おとなのくせに、いうことをきけないの?だからむしばになるんです」
と一喝します。さらに歯磨きについて、
「先生は、ひとにはいうけど、じぶんではやりませんね。はいしゃのくせに」とたたみかけます。なかなか痛快です。
リナはその治療方法もかなり変わっています。
歯茎を切って、歯の種を植えるのです。
「こやし」代わりの注射を嫌がるたぬき先生には「いつもはかんじゃにするくせに」と一言。強いリナ。
そして無事に治療は終わり、ほかの患者さんが。出迎えるのは看護婦の仕事だというたぬき先生に、リナは、
「ここでは先生のやくよ。じぶんのむしばもなおせないくせに」
また「くせに」が出た。笑
実際、その後もリナの方がテキパキしっかりしているのです。珍客が次々訪れては、りながたぬき先生の横から的確な指示を出してさばいていきます。
最後はアフリカらしき草原へ。
さぁ「ナリタリナ」は一体何者だったのでしょう?
後書きに書かれていますが、作者はアフリカがとってもお好きなんですね。
このシリーズ、もう一作ありまして、『たぬき先生だいじっけん』といいますが、そちらも大変おもしろかったです。
合わせて復刊を望みます。