「練習は1日休むと、取り戻すのに3日かかる」
このフレーズを目にした瞬間、小さなころ「私もお友達と遊びたいのに」と泣いて訴えたときのことがふわーーーっと呼び起こされました。
「1日休むと…」は、音楽の世界でもよく言われます。ピアノ少女だった私は、子どもながらに、それまで積み上げてきたものが後退するのが嫌でした。だから、気持ちに蓋をしてコツコツと練習を続けちゃう。こんな大人になってもエマの気持ちはよくわかりました。
特に幼年期は、身近なお友達とは違う時間を過ごすのが寂しいことがあります。そういうワンシーンだけを切り取って「幼い子に練習を無理強いして」と意見される方もいらっしゃいます。
しかし、子ども本人からすると「いや、別にやらされてないし、自分でやりたくて練習してるし」ということだったりするのです。
ちょっとだけ人より早く、なりたい自分が見えていて届きそうな子どもは、何をおいても練習を選びます。上達した自分を目指して頑張ることが楽しいし、達成したときは嬉しい。
そうやって私も年を経ていくうちに、少し遠くに暮らす、同じ志を持ったお友達に出会います。音楽を通して仲間が見つかったときの喜びは、何物にも代えがたいものでした。そうか。世界を探せば仲間はいるのか!と目の前が開けた瞬間でした。
テラの不思議な力なのか、エマの出会ったモーツァルトは、場所だけでなく時空も超えてしまっていましたよね。エマのフィギュアスケートと、モーツァルトの音楽が刺激し合い、それぞれのアートを「なんて楽しい!」と気づくまでの過程は、きっときっと多くの小さな芸術家たちをインスパイアしてくれるシーンになるだろうなと思いました。
読んでいる間、頭の中でモーツァルトの「きらきら星変奏曲」が流れていました。この曲でエマはどんな風に滑ったのかなぁと想像が広がります。モーツァルトにあの曲を作らせたのはエマだったのか!なんて妄想も楽しかったです。
物語の最後のページには、メダルを獲得したであろうエマが、同じ時代を生きる仲間に囲まれ、幸せそうにしている姿が描かれていて、うれしい気持ちになりました。
道を究めようとする過程でできる仲間こそが人を幸せに導いてくれる宝物のような存在だなと大人になった今、思うんですよね。
習い事の練習がつらそうだな、私はこの子に無理させていないだろうか、と悩むママさんがいたら、一度読んでみては?と、この絵本をおすすめしちゃうかもしれません。