前作『ワンダー』のスピンオフ作品ですが、『ワンダー』を読んでいなくても、難なく読むことができます。
『ワンダー』に登場したいじめっ子のおばあちゃんは、裕福でインテリなユダヤ人家庭で育ちましたが、ナチスの政策によって差別を受けるようになり、ついには両親と離れ離れになります。おばあちゃんの窮地を救ってくれたのが、おばあちゃんが見下していた下級層の一家。
差別意識は、誰の心の中にも潜んでいること。監視社会では、誰も信じられなくなること。それでも愛は、信じる心から生まれてくること。色々考えさせられます。
おばあちゃんと、救ってくれた男の子との恋は、とても初々しくて大人でもドキドキします。だけどその先に、悲しい別れが。なぜなら、この男の子は……。
ナチスによるホロコーストというと、ユダヤ人迫害が有名ですが、この本では身体障がい者も「排除」の対象になっていたことが描かれています。見た目で人を判断してはいけないという『ワンダー』のテーマに戻っていく作品です。