「うさぎ屋のひみつ」「春の窓」「星のおはじき」「サフランの物語」が収録されています。
「うさぎ屋のひみつ」は、若い奥さんの描写から始まります。
「この人は、とてもかわいらしく、気だてがよかったのですが、困ったことに、たいへんなまけ者でした」と。「かたづけもめんどう、おそうじもめんどう」と、書き出しで妙に共感してしまいました。
そんな奥さんのところにやって来たのは、「夕食配達サービス」のうさぎ屋でした。
初出は1985年の「母の友」、80年代のバブルの時代、家事の代行や配食サービスが始まった時期と重なりそうですね。
さて、うさぎ屋の代金の支払いは、アクセサリーを一個なのです。それで、とびきりおいしい食事が提供されます。
こうなった場合、頼んでみたいという奥さんはいるでしょうか?気軽な気持ちで始めたことなのに、気がついたら泥沼にはまっていたということが現実でもありそうですね。
人間の欲望は限りなくそこに怖さを感じます。
最近、「雪の女王」を読み返してみて、安房直子大切な人を取り戻しに行くお話は、アンデルセンに影響を受けているのではないかと思うようになりました。
「サフランの物語」は、女の子をおばあさんに連れ去られて、行方を探すお母さんのお話です。「声の森」や「初雪のふる日」などの安房作品を彷彿とさせます。
安房作品といえば、異界や異形のものとの交流。「春の窓」はそこにロマンスも加わったロマンチックな作品だと思いました。