子ども時代は海外にいた私にとって絵本はすべて洋書でした。今になって思えば名作絵本の数々を手にとっていましたが、そのなかでもこの絵本は独特なタッチの絵と面白いストーリーの展開にすっかり魅了され字もまだ覚えないうちに夢中になってページをめくっていたのを憶えています。
あれから30年。家庭を持ち家にクリスマスツリーを飾ろうと思ったとき、花屋でモミの木の枝が売られているのを見かけました。「枝の先っぽでも、ちゃんとツリーの形。このままツリーになるかも」迷わず買い求め家に飾りました。
わが家にぴったりサイズのミニツリー。まるであの絵本そのまま!ええっと、題名は・・・?題名を思い出す前に、ねずみがにっこり笑顔になっている様子が真っ先に目に浮かんできました。子どもながらに1本のツリーを通して皆が笑顔でクリスマスを迎えたことにほっとしたのでしょう。長い間思い出すことのなかった記憶。モミの木の枝を見て思い出しました。
子ども時代に読む絵本がどれほどの力を持っているか、おおらかでのびのびとした絵本の世界に身を預けているうちに絵本が育んでくれたものの大きさを改めて気付かせてくれた一冊です。