安房直子さんの「おはなし」が好きです。読んでいると独特の世界に入っていきます。そんなわけで、今回、この本を手にとりました。予想通り、期待通り、この中の6つの短編は、どれもこれも、私をもう一つの世界に連れていってくれました。一番好きなのは、「小さい金の針」。タイトルになっている「ひぐれのお客」もいいです。
ところで、この本がこんなに素敵な本に仕上がっているのは、何といってもMICAOさんの刺繍による絵の魅力が大きいのではないでしょうか?初めは恥ずかしながら気づきませんでした。文字に夢中になって、さらっとしか見ていなかったものですから・・・。ところが、「あらっ?」「えっ?」なんて素晴らしい布と糸からなる絵なのでしょう!!
不思議な世界を描く安房さんのおはなしだからといって、あまりに幻想的な絵を持ってくると、きっと手に取りにくい本になると思うのです。そうではなくて、ちょっとコミカルな感じの絵や、布と糸の風合いからくる温かさがなんともいい雰囲気です。
うれしくてうれしくて、わくわくドキドキしながら読みました。MICAOさんの手仕事は、「小さい金の針」や「ひぐれのお客」の内容とも、なんとなーく、重なりました。
最後のエッセイも、息子さんと絵本を楽しんでいらっしゃる様子が優しい言葉で語られていて、とても良いです。