一見ちょっと絵が怖いかなぁと思い、図書館で借りたのですが、案外、娘に好評でびっくり。
かいじゅうが「かいじゅう踊り」を踊るページなど、黄色い目玉をぎょろぎょろさせ、大きな牙だらけの口をあんぐりあけて、鋭い爪の手をふりあげ、今にも食べられそうな形相なのに、なんだかチャーミングに思えてしまう。なぜでしょうか。それはセンダックの独特の絵の色使いにあるのでしょう。
センダックの色使いの魔法は原色でもなく、淡い色でもない独特のペンタッチ。それはかいじゅうを一見、恐ろしく、でも愛嬌のある姿にしてしまいます。
またストーリーも少年の夢の世界のお話なのか、それとも現実のお話なのか、境界線をあやふやにしているところもこの絵本の魅力。読み手の想像力がどんどん書き立てられ、マックスと一緒に「かいじゅうのいるところ」へと旅をするのです。マックスが旅を終えて、自分の寝室へと帰って来たとき、そこには、あたたかい夕ご飯が置いてあり、私たちはマックスと一緒に今までの冒険から抜け出て、現実に戻り、母親の温かい愛情を感じます。
最後のページに何も挿絵がないのも、「まだ ほかほかと あたたかかった。」とだけ書いてあるのも夢から覚めた後の余韻を残してくれます。
娘がもう少し大きくなって、ちゃんとストーリーを理解できるようになったら、もう一度一緒に読みたいと思いました。その時は、娘はこの絵本を通じて母のひそやかな愛情を感じてくれるでしょうか。