戦争体験者の語りを絵本で紹介しているシリーズの第5巻です。
この巻は戦争に参加した人間が、戦場で自分を見つめ直すことから戦争の悲惨さを痛感したり、無力感を感じたりしたことを語っています。今までの巻とは異質な絵本でした。
2編の話が載っています。
第1話
「海にちったなかまたち」 深田幸太郎:文 / 岡本順:絵
海軍の学校に入り自ら進んで戦争に参加した人が主人公です。国のためと戦争に肯定的にも読みとれます。しかし、乗船した軍艦の中で仲間や部下が死んでいく様、人が爆弾として散っていく事実を体験する中で持ち上がってきた問題意識がポイントです。
戦争は決してカッコいいものではなく、悲しいものです。
実は自分の父も海軍兵学校出身。人間魚雷の訓練を受けていたため、戦争が1、2年続いていたら、自分は生まれていなかったのです。
海軍兵学校出の父の戦争観は自分とは少し異質です。
でも、このお話が戦争肯定でなくて良かったと思います。
第2話
「わたしはせん場のかんごふさん」 金治直美:文 / 伊東美貴:絵
従軍看護婦として戦地に赴いた女性が主人公です。
病気や戦傷で倒れた兵士たちを支えるという使命感で働こうとしますが、薬も設備も足りない状況の中で無力感を覚えます。
苦しい思い出逃げまどっていた時に知らされた終戦。
このお話は無力感と戦争の悲惨を語っています。
終戦後、日本に帰っても看護士として働き続けた逸見さん。
平和のありがたみと、戦争中には感じられなかった自分の夢への充実感と喜びが伝わってきました。