家でお母さんに髪の毛を切ってもらったテコちゃん。上手に前髪を切りそろえてくれたが、あまりに短く切ってしまい、おでこが強調されて…
誰でも一度は経験したことがあるだろう、散髪「あるある」。
昭和と平成、令和が渾然一体となった不思議な下町で、色鮮やかで多様な人たちに囲まれた幸せな空間。人情味溢れて、見ず知らずの他人にちょっかいを出したり、知らない人同士が話し合ったりするのがあたりまえの世界。なんだか妙に懐かしい。
自宅で散髪してもらった体験のある人がどのくらいいるのかわからないが、私が子どものころは割りに多かったような気がする。
ある程度大きくなると、親の行きつけの床屋さん(美容室ではない)に行くようになり、一家で同じお店を3代にわたりお世話になっていた。この絵本を見ると、昭和の子ども時代を思い出す。
で、散髪すると、床屋さんだと(今は知らないが)襟足や眉毛、産毛なども剃刀で丁寧に整えてくれるので、「使用前」「使用後」くらいに顔が整ってしまった。残酷な近所の子どもたちは、しゃっきり整えた眉毛や、短く切りすぎて一直線にそろった前髪を見てははやしたてていた。今では、自分でやろうと思っても、ああは上手にきれいにできない。切りそろえた前髪を嫌がった、贅沢な子ども時代の思い出。
てこちゃんの嫌がる様子や、一生懸命どうにかしようとする涙ぐましい取り組みが切ない。ぱっちんひとつで上機嫌になるのも、床屋のお母さんに、クセの強い髪の毛を「大人になったら、パーマ代がかからなくていいね」の一言で立ち直った思い出と共通するものを感じた。がんばれテコちゃん。女子の道はまだまだ長いぞ。