ティーパーティーに招待されたダンデライオンがダンディーにばっちりきめていったのに、招待してくれたジェニファー・キリンさんの反応は…。絵本のタイトルからして洒落が効いています。
タンポポのギザギザの葉っぱがライオンの歯に似ているからdandelionと言うそうですが、ダンデライオンが床屋でカットとシャンプーをしてもらった後のヘアスタイルはまるでタンポポの綿毛のようです。こんなはずではなかったという彼の表情を見て、同様の経験をした自分を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。
一度門前払いをくらって、土砂降りの雨の後に再びジェニファーさんの家へ行き、今度は愛想良く出迎えられた時のダンデライオンの表情が、複雑な気持ちをよく表現していてたまらなくいいです。すべての事情を知っている読者に向かって「ねぇ、どう思う?」と言っているような目。そばに行ってポンポンと肩を叩いて慰めてあげたくなります。
その後の歓迎ぶりに元気を取り戻したダンデライオン。結果として床屋代と衣装代と花代が無駄になった訳ですが、ありのままの自分のよさを再発見することになりました。
だてライオン(ここにも洒落が!)の「だて」という言葉の意味が子供には分からないかもしれませんが、訳者のアーサー・ビナードさんの日本語への造詣の深さが隋所に感じられ、文章も読み返す程に楽しめます。