「ぷちっ」
左側に現れたのは、小さくて黒い、ひとつの丸。ほどなくして右側の方からも音がします。
「ぷつん ぷつん」
黒い丸より少し大きめ、今度は真っ赤な丸が上下にふたつ。と、次の瞬間。
「びゅう―――――――ん」
赤いふたつの丸がぐぐぐ―――とのびて、黒い丸をとりこんで、そのままひとつになった!?
さらに、その赤くて長い不思議な形のものがそろそろ、にょろーり にょろにょろ 目玉をギョロリとさせて動き出したかと思えば……
一体さっきから何を言っているかといえば、絵本の話です。
だけどこれ、絵本といっても0、1歳の子から楽しめるあかちゃん絵本なのです。
あれ、そんな小さなあかちゃんでも絵本なんて読むの?
だけど、0、1歳のあかちゃんも、おっぱいやママの顔や目を連想させる黒い丸や変化する丸い形に反応を示すってことはわかっていて、そんなところから着想を得てつくられたのがこの絵本だというのです。
この摩訶不思議な絵本をつくったのは、グラフィックデザイナーとしても世界的に活躍をされている駒形克己さん。絵本の他に知育玩具など独自のモノづくりをされてきた駒形さんがあかちゃん絵本『ごぶごぶ ごぼごぼ』を手がけられたのは19年前。娘さんのためにつくられたというこの絵本は今でも大人気。やっぱり不思議な形と言葉で構成されていて、それを見ながらあかちゃんが声を出したり笑ったりするのです。そんな我が子の反応に驚き、ママの方がその様子を見たくて、観察をしたくて夢中になってしまう、という訳。
そして今作『ぎゅ ぎゅ ぎゅ―』はそれ以来、あかちゃん絵本としては19年ぶりの新作です。今度はお孫さんが喜んでくれるのが嬉しくて制作されたのだとか。だから例えばこの絵本を手に取って「何が描いてあるんだ?」「意味はあるの?」なんて思ってしまっても、とにかく試しにあかちゃんに読んでみてください。(なるべく感覚的にね)そうすると、反応するかな? しないかな? どこを見てるのかな? この言葉を言った時に喜ぶみたい、じゃあもう一回よんじゃおう! 聞いてないけど、触ってるなあ…なんて、あかちゃんを見ながら一喜一憂してしまう自分に気がつくはず。そしてその読み方が大正解だと思うのです。親子で一緒にその不思議な世界と時間を存分に過ごしてみてくださいね。子育てに結構「役に立つ」絵本になると思いますよ。
(KADOKAWA発の文芸情報サイト「カドブン」より抜粋)
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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