「ぼく おきられないよ……」
ベッドの中で、まくらに頭をうずめるしろくまの子。
どうやら熱があるみたいです。
おかあさんは、こども園のお迎えバスが来るからと、弟を送っていってしまいます。
「おかあさん、いっしょにいてくれると思ったのに」
からっぽの箱の中にいるみたいに、しずかな部屋。
「はやくかえってきてよ……」
病気のときの、だるくて心細い気持ちが描かれます。
しろくまの子は、おかあさんが帰ってくるとほっとして甘えます。
りんごを食べさせてもらったり、汗をふいてもらったり。
おかあさんが洗濯物や食器を洗う間、ソファでまどろみながらおかあさんの気配をかんじています。
看病されるあたたかさ、昼間のテレビのつまらなさ。
おかあさんをひとりじめして、おやつもリクエストできる、ちょっと特別な時間。
弟が園から帰ってくるまでの、ちょっとだけ特別な日……。
やさしい肌色の画面の中、しろくまの白と、効果的に使われる黄色があざやかです。
作者の山本りくおさんは、LEEの筆名で、絵本『ヨクネルとひな』(酒井駒子さんの絵)や『みてみておかあさん』(みやこしあきこさんの絵)の文章を書いています。
本書は、山本さんが作画を手がけたはじめての作品です。
ほうっと毛布にくるまれるようなひとときが描かれた本。
でも、そのひとときはちゃんと明日へつながると感じられる絵本。
風邪を引いたときやちょっぴり元気が出ないとき、手にとってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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