世界を旅する絵本作家・市川里美さんが中央ユーラシアの内陸国、キルギスを描いた愛らしい絵本。
キルギスの村に住む少女・ジャミーラが、山の祖父母と過ごすひと夏のおはなしです。
馬に乗って迎えに来てくれたおじいちゃんと一緒に、ジャミーラは山の大草原へやってきました。
雪におおわれた山並みと、遊牧民のテントとたくさんの馬たちが見えます。
テントの中ではおばあちゃんが料理の最中。
おばあちゃんから「ちいクロが帰ってこない」と聞いたおじいちゃんはすぐに飛び出していきます。
「ちいクロ」と呼ばれるその子馬は、ジャミーラを迎えに来た白馬の子で、足をケガしていました。
山に着いた翌朝から、ジャミーラは子馬の世話をしながら、もっとぴったりの名前はないかと考えます。
そして……「おまえをマハバットってよぶことにしよう! キルギスの言葉で『愛』といういみよ」と言うのでした。
キルギスの広々とした草原。
テントの中で味わうひつじのスープやパン。
しぼりたてであたたかい馬のミルク。
雪山から流れてくる冷たい水や、太陽のまぶしさ。
キルギスのおおらかな自然とひとびとの暮らしがつたわってきます。
ケガをした子馬と一緒に歩く練習をし、一緒に横になって休むジャミーラの姿が微笑ましい。
子馬のぬくもりに、小さな体いっぱいで寄り添う少女の喜びが伝わってきます。
見返しに描かれた可憐な草花にも、キルギスの夏の草原をたずねたくなります。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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