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『台所のメアリー・ポピンズ』 おはなしとお料理ノート小宮由さん、アンダーソン夏代さん インタビュー

メアリー・ポピンズを知っていますか? 傘をさし、大きなカバンを抱え、東風にのってやってきたバンクス家の子どもたちの不思議なお世話係(乳母)です。
岩波少年文庫におさめられている「メアリー・ポピンズ」シリーズは、日本ではおなじみのイギリス児童文学ですが、今回ご紹介するのは、おはなしと料理レシピが一つになったユニークな本『台所のメアリー・ポピンズ おはなしとお料理ノート』。いったいどんな本なのでしょう?
「おはなし」を翻訳されたのは小宮由さん。「お料理ノート」を翻訳されたのはアンダーソン夏代さん。それぞれメアリー・ポピンズの虜になったいきさつをたっぷり語ってくださいました。お二人のインタビューをお楽しみください。

台所のメアリー・ポピンズ おはなしとお料理ノート
台所のメアリー・ポピンズ おはなしとお料理ノートの試し読みができます!
作:P.L.トラヴァース
絵:メアリー・シェパード
訳:小宮 由 アンダーソン 夏代
出版社:アノニマ・スタジオ

「メアリー・ポピンズ」という名前を聞いたことはあるけれど、 お話は読んだことがない、という方もいらっしゃるかもしれません。 児童文学の定番であり、多くの読者が世界中にいるシリーズの主人公です。 この本には、ファンの方であればより楽しめて、 はじめて出会う人には「入門」になるようなお話の世界が 1週間分に凝縮されています。 そして一番の特徴は、メアリー・ポピンズの"お料理ノート"。 子どもだけでもつくることができる簡単なメニューから、 大人もはじめて挑戦するようなイギリスの伝統料理などなど。 読むだけでもいろんな想像が膨らむレシピをお楽しみください。

───「メアリー・ポピンズ」にこんな本があったなんて知りませんでした。『風にのってきたメアリー・ポピンズ』(Mary Poppins)は1934年イギリスで誕生していますが、本書は作者P.L.トラヴァースが76歳(1975年)のとき出版されたものだとか。
赤い素敵な表紙には、エプロンをしたメアリー・ポピンズが立っていてなにかをかき混ぜていますね。具体的にはどんな内容ですか?

原題は「Mary Poppins in the Kitchen」。作者が一週間分のおはなしを書き下ろし、作中に登場する料理やおやつなどのレシピを収めたものです。

メアリー・ポピンズは、バンクス家に住み込みで働いていますが、ある時、バンクス夫妻や料理番のブリルばあやなどが、一週間、家を留守にすることになります。その留守中、毎日、風変りな人物が入れ替わり立ち替わりバンクス家にやってきて、メアリー・ポピンズとバンクス家の子どもたちと料理をしたり、食事をしたりします。前半はそのおはなしです。

「メアリー・ポピンズ」のなかのキャラクターがたくさん登場するので、ファンであれば「わっ、あの人だ!」と楽しめるだろうし、はじめて出会う人には“入門”的な要素が一週間分にぎゅっと凝縮されているんですよ。
後半部分は、おはなしに出てきた料理を中心としたレシピ集になっています。イギリスの伝統料理の定番から、ちょっと凝った料理、デザートまでいろいろ載っています。アンダーソン夏代さんが、すべての料理を実際に作り、カップ表記だった原書をg(グラム)やml(ミリリットル)表記になおすなど、現在の私たちが再現しやすいように調整しながら訳してくださいました。


月曜日のおはなし『台所のメアリー・ポピンズ』から


レモンスフレ『台所のメアリー・ポピンズ』メアリー・ポピンズのお料理ノートから

───おはなしを小宮由さんが翻訳されることになったきっかけは? アノニマ・スタジオさん(「ごはんとくらし」をテーマにする出版社)から依頼があったのですか?

はい。いつもは自分が翻訳したい作品を出版社にもちこむことが多いのですが、これはアノニマ・スタジオさんからの依頼です。
依頼された編集者さんとは旧知の仲で、昨年『モミの木』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン作、サンナ・アンヌッカ絵)でご一緒したのですが、私自身はこの本のことを知りませんでした。

───1970年代に一度、日本でも訳本が出ているそうですね。

ええ。アンダーソン夏代さんは、その『メアリー・ポピンズのお料理教室』という旧版を手元に持っていらして、アメリカでの復刊版を手に取り、日本では絶版になっているからもう一度出版できないかとアノニマ・スタジオさんに相談されたのだとか。 新訳・新装版としての出版が決まり、おはなし部分の翻訳依頼をいただいたとき、二つ返事で引き受けました。
ふだんは内容を判断して、翻訳を引き受けるかどうか決めるのですが、今回は即決でした。だって、メアリー・ポピンズですもの!


復刊されたアメリカ版と、日本語旧版              カラーになって復刊したアメリカ版

───小宮さんもメアリー・ポピンズが好きだったのですね。最初に読んだのはいつですか?

いちばんはじめに読んだのは子どもの頃だと思います。面白いっ!と再確認したのは大学生の頃かもしれませんね。
林容吉さんが訳したメアリー・ポピンズは、私にとっては「岩波少年文庫のなかで何を選ぶ?」と聞かれて挙げるとしたら5本の指に入るくらい大好きです。
しかも依頼された本は、作者P.L.トラヴァース(1899-1996)が書き下ろし、「メアリー・ポピンズ」シリーズとおなじ、メアリー・シェパード(1909-2000)が挿絵を描いている。メアリー・シェパードは、『たのしい川べ』や『クマのプーさん』の挿絵を描いたアーネスト・H・シェパードの娘さんですね。この二人の本ならば、それはもう内容的に間違いないだろうと。
編集者さんも、私がここまでメアリー・ポピンズを愛していたとは知らなかったと思います(笑)。


小宮さんのメアリー・ポピンズ(岩波書店・愛蔵版)

───どんなところが魅力なのでしょう。現実と非現実を自由に行ったり来たりするところ?

あぁ、それは「エブリデイ・マジック」と言われますね。何が魅力か・・・。うーん、どう言えばいいんでしょうね。
とにかく、いちばんの魅力はメアリー・ポピンズその人でしょうね。この人の不思議さ。得体が知れないでしょう?
だって、キング・コブラと親類ですよ。海底に住む大ウミガメとだってそう。ポセイドンとも友だちですよ(笑)。
この人の存在自体がおとぎばなしそのものなんです。それが最大の魅力と言っていいでしょうね。

───すぐ「フフン」と鼻をならすし、ショーウィンドーに自分の格好をうつしてうっとりするし、子どもが口ごたえするとキッと怒る・・・(笑)。

メアリー・ポピンズの子どもへの接し方、私は好きです(笑)。子ども扱いしないし、対応は手厳しい。「わたしはわたし、あなたはあなた!」と突き放している。でもその実、一人一人の子のことをちゃんとわかっていて、子どもたちを心の底から楽しませてくれるじゃないですか。
メアリー・ポピンズってどういう人なんだろうと、バンクス家の子どもたち、ジェインもマイケルも不思議でたまらないし、知りたくてしょうがない。だけどメアリー・ポピンズは語ってくれない。「いくら聞いても、決して語ってくれないのです」ってね。ミステリアスですよね。

───本当に。どこからやってきて、どこへいってしまうのか。だれにもわからない。

こんな人がいてくれたら、さぞかし面白いだろうなあと思いますよ。イギリスでは、新聞広告に“MP求ム”って出ると、メアリー・ポピンズのようなスーパー乳母を探しています、という意味でどんなイギリス人にも通じてしまうそうですからね。それほど人々の心にすっかり根づいているんですよね。

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小宮 由(こみやゆう)

  • 〈1974年-〉東京都生まれ。学生時代を熊本で過ごし、卒業後、児童書版元に入社。その後、留学などを経て、子どもの本の翻訳に携わる。東京・阿佐ヶ谷で家庭文庫「このあの文庫」を主宰。祖父はトルストイ文学の翻訳家、故・北御門二郎。

アンダーソン 夏代(あんだーそんなつよ)

  • 福岡生まれ。中村学園大学短期大学食物栄養科卒業。
    フロリダ州ジャクソンビル在住。
    アメリカ南部・ノースキャロライナ州出身の夫との結婚を機に,アメリカ料理(特に南部料理)の研究を本格的に始める。アメリカの田舎でも無理なく作れる和食と各国料理の教室を主宰。著書に『アメリカ南部の家庭料理』、『アメリカン・アペタイザー』(アノニマ・スタジオ)。

作品紹介

台所のメアリー・ポピンズ おはなしとお料理ノート
台所のメアリー・ポピンズ おはなしとお料理ノートの試し読みができます!
作:P.L.トラヴァース
絵:メアリー・シェパード
訳:小宮 由 アンダーソン 夏代
出版社:アノニマ・スタジオ
モミの木
モミの木の試し読みができます!
作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン
絵:サンナ・アンヌッカ
訳:小宮 由
出版社:アノニマ・スタジオ
アメリカ南部の家庭料理
著:アンダーソン 夏代
出版社:アノニマ・スタジオ
アメリカン・アペタイザー
著:アンダーソン 夏代
出版社:アノニマ・スタジオ
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