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しばわんこの和の行事えほん

しばわんこの和の行事えほん(白泉社)

お正月、節分、夏祭り...季節に縁のある遊びに触れながら、親子で楽しめる日本の行事をご紹介。

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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  日本最高齢更新!井の頭のゾウ はな子の物語『せかいでいちばん 手がかかるゾウ』北村直子さんインタビュー

今のはな子を伝えたいと思い、絵本作りがスタートしました。

───『せかいでいちばん手がかかるゾウ』を読んで、絵本の中でも珍しいノンフィクションに近い作品だと思いました。編集を担当された小山さん、この絵本を作ることになったきっかけを教えてください。

小山:はな子の67歳の誕生日を迎え、新聞に特集が組まれていたんですね。それを見て、私が子どもの頃に知っていたゾウのはな子が今も元気に生きていることにビックリしました。それから、はな子の記事を読んで、こんなに手がかかるゾウだということに2度ビックリしました。私は元々、ほかのジャンルの本の編集をすることが多く、絵本の編集をするのは初めてだったのですが、はな子の記事を読んで、是非絵本にしたいと思い、井の頭自然文化園さんにお願いに伺ったんです。そうしましたら、ご協力くださるとのことでしたので、絵を描いてくださる方を探すことになりました。


教育評論社の小山さん。

───北村直子さんは、グラフィックデザイナー、イラストレーターとして活躍されている中で、井の頭自然文化園のスタッフとして、ポスターや展示のデザイン等、全てにも関わられていますよね。

小山:そうなんですが、北村さんに決めたのは、井の頭自然文化園のスタッフをされていると知る前だったんです。北村さんの絵本を見て、この方に絵をお願いしたいと思い、プロフィールを見ました。そうしたら、「井の頭自然文化園で働いている」と書いてあって、「え〜〜〜〜?!」って(笑)。もう、北村さんしかいない!って確信しました。

───最初は全くの偶然だったのですね。北村さんは、はな子の絵本のはなしが来たときに、どう思いましたか?

北村:正直、戸惑いました…。身近で毎日のように見ている動物だったので、普段の様子も飼育員の方から聞きますし、多くのファンがいるのも知っていたので、どういうおはなしにしたらいいのか…すごく悩みました。ただ、最初に小山さんからタイトルを伺って、その切り口なら描けるかもしれない…と思い、引き受けました。

───『せかいでいちばん手がかかるゾウ』というタイトルは、小山さんが決められたんですか?

小山:そうですね。はな子の案内板にそのように書かれていたこともあったそうです。私もはな子のことを伝えるにはピッタリだと思いました。それと、絵本の内容もはな子の過去を中心に描くのではなく、今のはな子のことを多くの人に知ってもらいたいと考えていたので、このタイトルでいきたいと思いました。


作者の北村直子さん、普段は井の頭自然文化園のチラシなどを作るデザイナーとしても活躍されています。

───最初にタイトルが決まっていて、そこからおはなしを考えるのは大変でしたか?

北村:おはなしに関しては、小山さんがおっしゃったように、今のはな子のことを書いたことと、私1人だけではなく、井の頭自然文化園の皆さんに読んでいただき、アイディアを頂きながら書いたので、全くゼロから作り上げるという感じではありませんでした。ただ、はな子をどういう絵で描くか決めるまでが難しくて、なかなか絵を描き始めることができませんでした。

───はな子の肌の色やしわなどとても味のある優しいタッチで描かれている絵だと思いましたが、このタッチに至るまで苦労されたんですね。

北村:今までも、動物園のポスターやチラシなどではな子をデザインすることはありました。ただ、はな子はその日のコンディションで肌が白く見えたり、しわが目立っている…など日によって見た目が変わることが多いので、長く残る絵本ではある程度のデフォルメして描く必要があると思いました。

───絵を描くときはどんな画材を使って描いているのですか?

北村:今回の絵本は、パソコンを使って描いているんですよ。文字の配置や全体の装丁もやらせていただいたので、普段デザイナーとして仕事をしている慣れた道具の方が扱いやすいなって思って…。

───そうなんですね! てっきり手描きの絵だと思っていました。デザインも含めて北村さんが手がけられているんですね。

北村:そうなんです。絵本なので、手描きの温かさも出せたらと、タッチを工夫して絵を描きました。

───デザイナーとして活躍されている北村さんだからこそ出せる味わいなんですね。
普段からはな子の絵を描くことは多いですか?

北村:はな子だけでなく、いろんな動物の写真を撮ったり、スケッチをしています。依頼があって制作するときは、必ずそのスケッチを参考にして描いています。そういう意味では、ほかの方よりもはな子の素材は手元にあったと思います。

───絵本の中では、2歳から10代、30代、そして現在のはな子まで描かれていますよね。はな子の年齢を出すのは大変ではありませんでしたか?

北村:はな子は1頭で暮らしているので、ほかのゾウと比較する必要がない分、一度、デザインが決まってしまえば、それほど難しくはありませんでした。それよりも、戦後から現代までのはな子を描くことで、飼育員の制服をどうするかがすごく悩んだところです。実際は制服も時代ごとに変化しているのですが、絵の中で制服がバラバラ変わっていると、その人が何をする人か分からなくなってしまう危険があったので、全体的な色味を合わせた服装にしました。そういう時代設定をベースに絵を描くのが少し難しかった部分です。

───特に読者に見てほしいページはありますか?

北村:私がこだわったのはエサのページです。

───細かく切られたエサが山になっている最初のページの絵ですね。

北村:これだけ手間がかかっているということは絵本を読んでいくと知っていただけると思うんですが、はな子の運動場にエサが盛ってある様子が色とりどりでとてもきれいなんですよ。なので、絵本もこの山盛りの場面から始めたいと思って、そこをこだわりました。

───実際にエサを作っている場面を見たことはありますか?

北村:はい。飼育員のバナナの皮むきはすごい速さですよ。やらせてもらったことがありますが、全然遅くてダメでした(笑)。

小山:私は取材のために飼育員の1日体験をさせてもらいました。

───それは、貴重な体験ですね! どんなお仕事をしたんですか?


はな子のおにぎりを作っている様子。

小山:朝8時半からスタートして、運動場に置くエサを運んだり、はな子が運動場に出たあとに室内の掃除を行ったりしました。はな子のエサは、ニンジンなどは機械を使ってあっという間に細かくなりました。黒糖をお湯で溶かしたり、大きなおにぎりを握ったり…皆さん動きがスムーズでテキパキと動かれているのがとても印象的でした。

───体験してみて、一番驚いたことはなんですか?

小山:飼育員さんが、はな子のエサについてはなしをされていたのですが、「今日は花粉症に効くお茶を試そう」などとおっしゃっていました。本当にいろいろな食べ物を試しているんだなぁと思いました。

───絵本では、はな子が便秘になり、ウンチを出すために飼育員の方や獣医さんが手を尽くす場面や、歯が1本になってしまったはな子のためにエサを工夫する場面などが描かれていますが、「ゾウは横になると死んでしまうことがある」や「ゾウの歯は4本しかない」ということなど、初めて知ることも多かったです!


北村:あまり説明的にならないようにゾウの説明を入れたいと思い、はな子のエピソードに交える形で紹介しました。



───ゾウは寝るときも横になって寝ないのですか?

大橋:長時間横になると、自分の体の重さで下になった側が大きな圧力を受け、あまり良くありません。また、腹ばいになると、呼吸に影響を及ぼすそうです。そのため野生のゾウはほとんど横にならないと言われているのですが、動物園のゾウの中には横になって寝るゾウもいます。ただ、年を取ると起きるときに大変なので、横にならずに眠るようになります。


井の頭自然文化園の広報を担当されている大橋直哉さん(右)。

───そうなんですか。体が大きいことで苦労することも多いんですね。絵本を読むと自然にゾウのことに詳しくなるのも嬉しいですよね。絵本ができあがったときの飼育員の皆さんの反応はいかがでしたか?

大橋:最後のページに飼育員のメッセージが載っているのですが、そこに全てがつまっていますね。我々としては、はな子の現在の姿を伝えられる絵本ができたことがとても嬉しいです。それと、我々も関わって、実際の飼育員の姿を描いてもらえたのが良かったと思います。

───北村さんは、完成した絵本を見て、いかがでしたか?

北村:最初は、はな子の物語を作り上げることができるか、不安な部分もありましたが、はな子に対して読者の方に知っていただきたいところを、動物園の皆さんと一緒に作り上げることができたので、とても満足しています。

───『せかいでいちばん手がかかるゾウ』は絵本好きの方以外にも、はな子について知りたい、沢山の人が手に取ってくれるんだろうな…と思いました。はな子ファンの中にも、知らなかったエピソードがあるかもしれませんよね。

小山:そうですね。動物園ではな子を見てから、近くの本屋さんで絵本を求めてくださる方や、絵本を読んで、はな子に会いに来る方も増えていると聞いて、とても嬉しく思っています。

大橋:はな子は2015年1月1日に68歳を迎えました。井の頭自然文化園では、別の日になりますが、毎年誕生日をお祝いしていますので、是非、多くの方がはな子に会いに来てもらえると嬉しいです。


はな子と一緒に記念の3ショット。

───私もまた、はな子に会いに来たいと思います。
今日は本当にありがとうございました!

おまけ


    

はな子の誕生会についてはTokyo Zoo Netで公開しています。
>>>Tokyo Zoo Net 
>>>「はな子68歳のお祝い会」詳細

【編集後記】

今回おはなしを伺った、成島園長と北村直子さんがコンビを組んだ絵本『珍獣図鑑』(ハッピーオウル社)もオススメです! 

この絵本の中でも、北村さんの描く珍獣たちの美しい姿を見ることができます。
この他にも、続々と絵本の依頼が増えているという北村さん。普段から動物たちに囲まれてお仕事をされているからこそ、これからどんな作品がうまれてくるのか、とても楽しみですよね。

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インタビュー: 磯崎園子 (絵本ナビ編集長) 
文・構成: 木村春子(絵本ナビライター)
撮影:所靖子

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北村 直子(きたむらなおこ)

  • グラフィックデザイナー、イラストレーター。1975年、東京都生まれ。多摩美術大学絵画科油画卒業。東京都の動物園、井の頭自然文化園でポスターや展示デザインをするかたわら、広告、装丁などのイラストやデザインを手がける。主な作品に、絵本『おでかけ どうぶつえん』(学研教育出版)、『おならゴリラ』(偕成社)、『珍獣図鑑』(ハッピーオウル社)など。

成島 悦雄(なるしまえつお)

  • 東京都井の頭自然文化園園長。1949年、栃木県生まれ。東京農工大学卒業後、上野動物園、多摩動物公園の動物病院勤務などを経て、2009年より井の頭自然文化園園長。日本獣医生命科学大学客員教授、日本野生動物医学会評議員。図鑑などの監修を多く手がけるほか、著書に『珍獣図鑑』(ハッピーオウル社)など

作品紹介

せかいでいちばん 手がかかるゾウ
せかいでいちばん 手がかかるゾウの試し読みができます!
文:井の頭自然文化園
絵:北村 直子
出版社:教育評論社
全ページためしよみ
年齢別絵本セット