秩父夜祭、アエノコト、羽子板市、歳暮、正月事はじめ、なまはげ、大みそかなど、たくさんの絵で行事の由来を紹介する行事絵本の決定版! 大雪、冬至などの二十四節気、冬の星、クリスマス飾りの工作なども紹介。
●「3年前に全ての原稿が出来上がっていたんです」
───かこさんの作品には私自身も子どもの頃に楽しませていただきました。全ての作品についてお話を伺いたい!と思うのですが、そうすると時間がいくらあっても足りませんので、グッと我慢して…(笑)。 最新作『こどもの行事 しぜんと生活』について色々伺えたらと思います。 この絵本は毎月1冊刊行ということですが、かなり早いペースで制作などは行ったのでしょうか?
実はこの絵本は3年前にすでに原稿をはじめ、全部終わっていたんですよ。
───え!3年も前にですか?
そうなんです。そのため発売前の作業は編集部でのチェックや色校の確認などがメインでした。ただ、やはり3年経つと内容が古くなっている部分も出てくるので、最新で載せる必要があるものは、ページ構成を調整するなどのやり取りを行いました。
───それは「3月のまき」に載っている、東日本大震災のことなどですね。東日本大震災の発生直後に、これほど大震災のしくみが詳しく、分かりやすく書かれていることにビックリしました。
日本は地震国ですから、地震については元々「9月のまき」に載せることは決まっていたのですが、一番最近の震災は絶対に載せなければと思いました。
───「こどもの行事 しぜんと生活」は、今までかこさんが手がけられた科学絵本とも、物語絵本とも違う、「伝承絵本」という新しいジャンルのように感じました。
───では、本を作るための資料は60年分たまっていたんですね。
そうなんです(笑)。
───そんな莫大な資料を絵本のページ数に凝縮するのは、大変な作業だったのではないですか?
───行事のページの次に食べ物があったり、お祭の後に季節の花や昆虫の説明が載っていたりと、内容が多岐にわたっていて、構成のバランスが、かこさんならではだと感じました。
どんなに昆虫が好きな子でも、昆虫だけで1年間過ごせるわけじゃないのでね、昆虫もあって、おいしいものもあって、体を動かして遊ぶ内容もあって…、1つの月についていろんなことを総合的に学ぶことができるように意識しましたね。
───大人でも知らなかったことがすごくたくさん入っていて読み応えがあり、さらに子どもにも分かるように描かれているので、とても理解しやすかったです。 見返しには有名人の生まれた日や命日がカレンダーになって載っていて、ついつい、自分の生まれた日を確認してしまいますね。
───かこさんの絵本はどの絵本にも見返しに絵が描かれていますよね。
これはまだ僕が絵本を描き始めて間もない頃に、見返しに何も描いていない絵本を見てがっかりした思いがあって…。「きっと子どもさんも僕と同じように見返しが色紙だとがっかりするんじゃないかな。僕の絵本を買ってくれる子どもさんにはずっとワクワクしてほしいな」と思って描いています。
───他にも制作の中で特に苦労をした部分はありますか?
───それぞれの月の中でのかこさんの気に入っているところや印象に残っているページを教えていただけますか。
…なにしろ3年前のことですからねぇ…(苦笑)。
<かこさんに各巻のみどころをお伺いしました!>
「1月のまき」
おめでたい月なので、楽しい華やかな行事をたくさん載せました。
僕は食いしん坊なので、各地のお雑煮を描けたのが幸せでした。
「2月のまき」
雪国生まれの僕は、一度でいいから雪のことをいやってほど描きたいと思っていたんです。この巻でその夢が果たせました。それと閏月について詳しく書けたのも良かったです。
「3月のまき」
3月は何といっても東日本大震災のことを書かなければと思い、急遽ページを構成しなおしました。12巻の中でも最も印象強く残っている出来事です。
「4月のまき」
いろんな1年生を描くことができた、1月と同じくおめでたい月です。桜の花びらを種類別に描いたので、お花見のときに観察してもらえると思います。
「5月のまき」
愛鳥週間で鳥の「ききなし(鳥のさえずりを人間の言葉に当てはめて憶えやすくしたもの)」を描けたのが印象に残っています。地域によって微妙に違っていたり、ちょっとうがった見方を鳥の声に当てはめたり、民衆の知恵を感じますね。
「6月のまき」
僕の兄が歯医者なので、僕自身、歯の絵本をたくさん描いています。6月はやはり「歯の衛生週間」。虫歯の話を描きました。
「7月のまき」
僕はトンボ少年だったけど、セミ少年でもありました。虫かごなんかなかったから、紙袋にセミを入れて持って帰って、家の中で袋が破けてしまって大変なことになったこともありました。セミを描くのが楽しかったです。
「8月のまき」
流行に乗っかったわけではないですが(笑)、地獄絵は迫力があると評判でした。お盆、お祭り、そして必ず伝えなければならない原爆、戦争です。
「9月のまき」
日本は地震とともに台風の国でもあります。台風の仕組みを描けたこと、過去の台風の上陸日を一覧に出来たのが良かったです。
「10月のまき」
渡り鳥とハロウィンについて描いたことが印象に残っています。あと、いろんな結婚記念日も描きました。結婚100周年はまだ名前がないので、是非実践して名前を付けてください。
「11月のまき」
昔は稲作が日本の中心だったので、行事の中には農業に関係のあるものも多かったんです。でも今は、農業の形態がどんどん変わっている。今後、農業に関する行事がどのように変わっていくかは分かりません。ただ新しい生活様式に変わる中で、農業の形態について知っていてほしいと思い、描きました。
「12月のまき」
1月に同様、イベントが目白押しのおめでたい月です。でも僕が書きたかったのは開戦のことでした。今は敗戦ばかりが取り上げられていますが、何事も始まりがあった。そのことを伝えたいと思いました。